独立型太陽光発電と家庭内照明のLED化

 太陽光発電と言っても,数百万円かけて屋根に大量の太陽電池パネルをのせて電力会社と電気の売り買いをする今話題の系統連結型太陽光発電ではありません。数枚の太陽電池パネルで発電した電気を鉛蓄電池に蓄え,インバータで交流100Vに変換し,家庭電気器具に用いるものです。系統連結型太陽光発電は商用電源が停電すれば,昼間でも太陽の出てない時や夜は基本的に電気の使用は出来ませんが,こちらは蓄電池に電気が蓄えられていればいつでも電気の使用が可能です。もちろん使用電気量は発電・蓄電能力によりますから装置にかける費用次第です。今回は予算は約10万円ということにしました。私にとって,昔からこの分野は,毎年日差しの強い夏になると挑戦したい気持が強くなる課題でもありました。これまでも小さな太陽電池でラジオを鳴らすようなことは窓際で行っていましたが,きちんと正弦波の交流100Vにして一般家電を稼働させることは,費用や太陽電池の設置場所の困難さから躊躇していました。しかし,最近,ソーラーパネルやインバータが自分なりに手の届く範囲になったと思えるようになったので,予算10万円の範囲内でという限度を設定し,挑戦してみました。
 合わせて,家庭内照明のLED化も進めました。単にこれまでの電球や蛍光管を互換可能のLED電球やLED管に替えるのに加えて,照明器具そのものは変えること無く内部装置だけLEDで安価に置き換えることも出来たので紹介します。

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1 独立型太陽光発電

使用した装置や部材

太陽光発電のために使用した装置や部材の概要は以下の通りです。

 太陽電池パネル 100W×3枚(最高条件で300Wの充電能力発揮)
 正弦波インバーター 入力DC12V 出力AC100V 500W
      LP-12V500W50H_2 (株)LOOP(同時に500Wまで使用可能)
 太陽電池充放電コントローラ(簡易型) 3台 SA-BA10 (株)電菱
 ディープサイクル型バッテリー 12V115Ah 1個
           G&YuBATTERY SMF31MS-850 (株)ナカノ
 ワットモニター(簡易電力計) 700-TAP017 サンワサプライ(株)
 ヒューズ入りカバー付きナイフスイッチ 日東工業(株)
 ヒューズ,ヒューズ台,各種端子台,IL型コンセント(直流部分の接続に使用),
 PVケーブル,各種キャブタイヤケーブル,各種圧着端子等配線材
 工具用コンテナボックス(バッテリー収納用),太陽電池設置用木材,各種金具

 価格は,同じ装置でも購入先によって色々です。特に100W太陽電池パネルはカタログデータ上は同じようなものがネットオークションで一番安い時は1枚7000円台で購入できました。今回は1枚平均1万円台前半というところでしょうか。インバータやバッテリーも含めて,いずれも販売会社は日本ですが,製造は国外アジア諸国のようです。日本語のパンフレットに加えて英語のマニュアルが付いているものもありました。企画設計が日本メーカーで製造が他国というのではなく,企画製作ともアジアの他社製で,単に輸入して販売しているだけのものも多いようです。100Wパネルを7000円で販売しても利益が出ているとなると,本当の製造原価はいくらなのでしょうか。日本製メーカーとは1桁値段が違うようです。製品の経年変化や耐久性などの信頼性はどうなのかわかりませんが,現在正常に稼働中です。カバー付きナイフスイッチやコンセント,配線材等についてはネットオークションの箱入りジャンク品をかなりの部分使用してます。これでなんとか10万円でした。

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 パネルは最初の写真のように取り付けました。南向きで田舎の家なので日当たりは抜群です。冬は雪がかなり降ります。左上の写真は昨年の様子ですが,屋根の雪下ろし前の状態です。毎年数回の雪下ろしで軒下は雪で埋まり,庭木は埋もれてしまいます。軒にはかなり大きなツララが出来て落下します。心配なので右上の写真のようにも簡単に設置を変更できるようにしました。

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 物置に設置したバッテリーと配電盤です。配電盤下のコンテナボックスにバッテリーを入れてます。左の3個のコンセントに3枚のパネルからの直流が入って来ます。直流用のコンセントは定められた物が無いので,IL型コンセントを使うことにしました。Lをプラスとしています。パネルが3枚なので3個設置してあります。そのとなりが充放電コントローラで,途中にヒューズを通し中央下の端子台で一つにまとめられて並列接続されます。端子台の先は並列に,ひとつはナイフスイッチを挟んでバッテリーへ,もうひとつは右のインバータに接続されています。ナイフスイッチでバッテリーと装置全体を切り離せるようにしています。やはり作業途中で誤ってバッテリーをショートさせてしまうのが怖いのでこういう配線にしました。ナイフスイッチの刃の側(ヒューズが付いている)は負荷側に付けるのが原則ですが,今の場合2つの考え方ができます。すなわち太陽電池にとってはバッテリーが負荷ですが,バッテリーにとってはインバータが負荷ともなっています。迷った末にこういう配線にしました。必要なら太陽電池はコンセントを抜くことで切り離すことができますから。最初の計画では100Wパネルを5枚の予定だったのでインバータは定格500W(サージ電力は1000W)にしたのですが,発電能力は小さくともインバータの定格電力はより大きな1000W程度のにすれば良かったと思ってます。暖房のファンヒーターなどは点火時のみ大きな電力で定常運転時は数十Wです。コントローラやインバータに設定された定格を超えれば自動的に電流をカットする安全回路が設けられているので,ナイフスイッチやヒューズを入れないでそれぞれ直結でもいいのですが,初めてでもあるので参考図書(3)を手本にこういう配線にしました。

2 どの位使えるか

 築100年以上になる実家の屋根裏部屋2室のLED照明や扇風機,ノートPCのACアダプター等を接続してみました。 不定期に週に半分程度滞在し,夏は扇風機(30W)を,夜は10WのLED管照明2〜3灯を主に使用していましが,今のところ(8月中旬から11月初旬の使用)バッテーリー電力不足で停止したことは一度もありません。これからの冬は日照不足が心配です。アバウトですが,このシステムでの満充電に要する時間と使用可能時間を計算してみました。

充電時間

パネル1枚については添付データ表によると次の通りです。
3枚とも厳密に同じではありませんので平均的な値です。
公称最大出力 Pmax=100[W]
公称最大出力動作電圧 ∨pm=18.2[V]
公称最大出力動作電流 Ipm=5.4[A]

3パネル並列接続なので,
最大出力=100×3=300[W]
最大出力動作電圧=18.2[V]
最大出力動作電流=5.4×3=16.2[A]

1日の平均日照時間を3.3hとすると,
1日当たりの発電電流量=16.2×3.3=53.5[Ah/D]

太陽電池の出力補正係数を0.85,
バッテリー充放電損失補正係数を0.95
とすると,
1日使用可能発電電流量=53.5×0.85×0.95=43.3[Ah/D]

使用バッテリーの20h率容量が115Ahであるから,
充電に要する日数=115/43.3=2.7[Day]

使用可能時間

10WのLED管(蛍光灯20W相当)2本と30W扇風機の計50W使用での使用可能時間を計算してみます。

インバータの効率を0.7(使用機種のマニュアルに記載がないので全く適当),
バッテリーの利用深度を0.6とすると,

使用可能時間=(115×12×0.7×0.6)/50=580[Wh]/50[W]=11.6[h]

バッテリーの利用深度は何年そのバッテリーを使うかによって,
1年使用なら0.85,2年使用なら0.75,5年使用なら0.6
とするのだそうです。ここでは5年使用するつもりで計算しました。

 利用した各係数については,参考図書(3)(4)で見かけたものや,この分野の諸先輩のWebPageで見かけたものの妥当と思われるものを使用しました。使用機のマニュアルにしっかり記載のあるものや,経験的なものまで色々です。
 算出結果を見ると,この程度の使用では1日5時間の使用で2日は可能です。週に半分しか滞在していないのだから,不在の間に満充電になっていると考えると大体合っているような気もします。天候の具合にもよるのでアバウトです。もう1個バッテリーを並列につなげばこの程度の使用は余裕かもしれません。算出法に間違いがあるかもしれません。ご指摘頂ければ幸いです。

3 自己満足度と今後の展開

 このシステム導入で電気料金がいくら安くなるとかいうのではなく,自然のエネルギーを日常の電気という形で何とか利用したい,そのために現在の状況でどれだけのことが個人で可能かということへの挑戦です。システム構築を通して学ぶことは多くありました。信頼性の問題はありますが,ソーラーパネルの価格はまだ安価になりそうです。条件が整えば,次は24Vの発電で1kW以上のシステム構築に挑戦する予定です。200Wソーラーパネル5〜10枚をネットオークションで物色中です。蓄電池の安価な確保も課題です。ソーラパネルや発電充電管理に加えてバッテリーの管理もより難しくなるでしょうが,この程度になれば,節約すれば商用電源への依存を限りなく小さくすることも可能と思われます。現在私は新潟市と会津山間部で時間的に半々の生活をしていますが,やはり個人としては,原子力発電には頼りたくないという気持ちです。
 (原子力発電についてはこちらもご覧下さい)
 この試みを通して天候や節電に今まで以上に注意が向くようになりました。自己満足に過ぎませんが精神的満足度はかなり大きい物があります。

4 家庭内照明のLED化

 白熱電球は単純にLED球に付け替えると同時に,蛍光灯は主に20W相当のものを次の写真のような形で使用してます。6畳ですが,壁や天井が白系統なので1灯だけでもいけます。木の板にホームセンターで入手可能な蛍光管なしの本体(1600円)とプルスイッチを取り付けています。20W相当のLED管(10W)はインターネットで1000円くらいで入手できます。100V直結できるタイプなら圧着端子で直接コードを取り付けての使用も可能です。木片でそれなりのシンプルなケースをつければデザインによっては見れるようになります。

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 次の写真の左は自分でもまあまあのデザインだったかなと思っているものです。右はキッチンに取り付けたペンダントライトです。ホームセンターで本体2000円でした。シンプルで好きなデザインです。

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 木片に取り付けた室内常夜灯(0.2W)とワットモニターです。常夜灯は暗くなると自動点灯します。夜のトイレ案内には十分すぎる明るさです。

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 次は玄関常夜灯のLED化です。変更前の状態です。本体はアルミダイカスト製のしっかりしたもので,カバーも厚いガラス製で20年近く使用してます。もったいないので内部だけLEDに換えることにしました。

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 左が購入したパーツです。右が交換後です。安定器と蛍光管を取り外し,口金がE17のLED電球を直結しただけです。LED電球は密閉器具対応品です。総費用1000円位です。

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 室内の蛍光灯も同じ方法で行くことにしました。交換前の状態です。

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 左が必要なパーツで,右が交換後です。カバーをつけて完成です。いつでも元に戻せるように今回は安定器やグロー管もつけたままです。

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5 参考図書

(1) 太陽光発電の家    桜井・小針・福本 共著 パワー社 1991年
(2) 太陽光発電実例集   桜井薫 編       パワー社 1993年
(3) 独立型太陽光発電と家庭蓄電 角川浩 著    パワー社 2011年
(4) 1kW独立型太陽光発電    角川浩 著    パワー社 2013年