1959年5月発売,販売価格11800円,外寸187×103×43mm,単2電池3本で動作,
無歪出力100mW。 3連バリコン使用,高周波増幅付き8石TRラジオ。
使用TRは,
2SC73×2(高周波増幅・周波数変換),2SC76×2(中間周波増幅),
2SD64,2SD66(低周波増幅),2SB52×2(電力増幅)。

「スーパーセンシビリティ」と銘打ち,当時としては高感度。
岸信介首相が外国訪問時に各国首脳へのギフトのため百台以上購入したという名機で,輸出用としては昭和39年頃も製造されていたロングセラー製品だったようです。

 小学生の頃,知人の家にあったラジオで,なぜか記憶に残ってます。Yahooオークションで見かけ,入札者がほとんど無いこともあり大変安価に入手しました。内部の状態も40年以上たったものとしては非常によく,内部金属の錆もまったく無くピカピカです。その穏やかな音質,形,色,操作感に加えて,小さい頃の思い出も手伝い,大変気に入っているラジオです。このラジオを聴いていると45年前に戻ったような気がします。アメリカ映画『オーロラの彼方へ』の中で,太陽の表面活動が活発になりオーロラが地球中緯度付近まで現れた時,電波の異常伝播が起こり,主人公が少年時代に事故で亡くなった父と古いアマチュア無線機で数十年の時を超えて交信するという場面がありますが,そんな気分にもなってきます。

 ケース色はこの色以外にも数種類あったようです。
      

 入手した機種はボリュームダイヤルの色が白(クリーム色)でした。前所有者が故障修理のため同機種の色違いを付替えたものと思われます。また,ケース底面にワレ・カケがありました。ワレはアロンアルファで,カケはアクリル板とグルーガンで補修しました。
           

 電池を入れると押さえの力がケースにかかり,この補修では強度に不安があります。木製の枠をはめて使用するにしました。

           

 SONYのロゴマークはホウロウ製のような感じでステキです。内部のジャンパーにより低周波増幅部が切り離せるようになっています。これはどう利用するのでしょう?。

    

 イヤホン端子は2個ついています。調べて見たら,右端子は現在のラジオと同じようにイヤホン使用時には本体スピーカーが切り離されます。左端子を使用すると本体スピーカーと同時使用ができます。これもどう利用したのかわかりません。電源スイッチはボリュームがスイッチ付きになっています。ボリュームは現在ガリ発生がまったくありませんがS付ボリュームを毎回操作するのは煩わしいしガリの発生も不安です。電源スイッチを独立して付けることにしました。といっても歴史的ラジオ本体にはできるだけ手を加えたくありません。使用法のわからないイヤホン端子を利用して内部の回路を少し変更し,写真のようなスイッチを作り電源スイッチにしています。これを装着しないときは本体のスイッチが有効になります。

    

 ところで,周波数表示の600kHzと700kHzの間と1200kHzの少し上にある2箇所の三角マークは何なのでしょうか。現在のラジオにはこのようなマークはありません。

          

 インターネット上で次のような当時のアメリカ政府の広報パンフレットを見つけました。

  

 640kHzと1240kHzに付けられたマークだったのです。当時は冷戦時代で核攻撃の恐怖が現実のものだったのだと改めて思い知らされました。アメリカでは核攻撃により一般放送網が破壊されても大丈夫なように国防用の放送局が準備されていたのですね。その送信周波数が上記の2つの周波数なのです。アメリカに輸出される日本のラジオにも相手国の指針に従いこのマークが記されていたのでした。

  1945年 広島・長崎に原爆投下
  1947年 トルーマン−ドクトリン,マーシャルプラン(米),コミンフォルム(ソ),冷争突入
  1948年 ベルリン封鎖(1949年 解除)
  1949年 北大西洋条約機構(NATO)結成,ソ連原爆保有宣言,中華人民共和国成立
  1950年 朝鮮戦争(1953年 停戦協定),ワルシャワ条約調印
  1951年 対日講和条約,日米安全保障条約
  1954年 ビキニで水爆実験成功
  1955年 ソ連水爆完成発表
  1957年 ソ連大陸間弾道弾と人工衛星(スプートニク)
  1958年 米国人工衛星(エクスプローラー)
  1959年 キューバ革命でカストロ政権成立
  1960年 新安保条約
  1962年 キューバ危機
  1963年 部分的核実験停止条約,ケネディ暗殺


日本初のトランジスタラジオTR−55
1955年(昭和30年) 8月 東京通信工業(現ソニー)より発売。
      価格18500円,TR5石,単3乾電池4本使用。
      その後,他メーカーも発売。昭和32年には生産台数で真空管式ラジオを追い抜いた。
      昭和30年の物価 大学卒初任給平均月給 男子10657円,女子9500円
                  私立幼稚園保母月給 6500円,カレーライス80円,整髪料150円
         


1959年(昭和34年)のできごと
    
 1月 1日 メートル法施行
     7日 ソ連の宇宙ロケット「ルナ1号」太陽系初の人工惑星となる
    14日 第三次南極観測隊,約1年間残留されていた樺太犬タローとジローの生存を確認
 4月10日 皇太子明仁親王と正田美智子の結婚式挙行
        テレビの普及台数200万台突破(前年は91万台)
    20日 東海道新幹線起工式(東京オリンピック前の開通をめざして)
    26日 王貞治,プロ入り初ホームラン
 6月 7日 KRT(現TBS)30分番組「ポパイ」放映開始
    25日 長島茂夫,天覧試合でサヨナラホームラン
 7月22日 熊本大学医学部,水俣病の原因は工場廃水の有機水銀と結論
 8月 1日 日産自動車がブルーバード1000cc,1200cc発売(68〜69万円)
        昭和33年5月 富士重工 スバル360発売,42.5万円
        マイカー時代のはじまり
 9月 1日 八幡製鉄戸畑製造所で新高炉稼動(日本最大日産1500トンの生産能力)
        高度経済成長の基幹となる高度鉄鋼業の幕開け
    26日 伊勢湾台風,名古屋を中心に東海三県を直撃
10月26日 ソ連,ルナ3号撮影の月の裏側の写真を発表
    29日 政府,所得倍増計画を経済審議会に諮問
12月14日 北朝鮮帰還第一船,新潟港を出港
    15日 第1回日本レコード大賞に水原弘の「黒い花びら」に決定
   
       
   ナショナルハイパー乾電池 単二 1個30円   キャラメル1箱16粒入り20円    

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