無電源でスピーカーを鳴らすゲルマニウムラジオの製作
電子工作は鉱石ラジオの製作から始まると人には言いながら実は作ったことがなかったのですが、挑戦してみました。屋根裏にアンテナを張り、アースをきちんと取れば新潟市内ではクリスタルイヤホンでバンバン聞こえます。あまりよく聞こえるので欲張ってスピーカーを鳴らせないかと考えました。しかも電源なしで。もちろんそのままではだめです。検波出力をトランスとコンデンサーで直流成分と交流成分に分けて、直流成分でコンデンサーを充電させ、それをトランジスターの電源にしてスピーカーを鳴らそうという発想です。トランジスタはもちろんゲルマニウム、スピーカーは昔の出力変圧器つきのものです。試行錯誤の末、静かな部屋でなら何とか聞こえる程度になりました。実用的には今一歩ですが、シンプルな構造と電気料金無しでいつでも聴けるという精神的満足感に浸ることができます。
回路図と現物写真
使用パーツ(すべてジャンク品)
バリコン ・・・ 真空管ラジオの廃品 430pF
同調コイル ・・・ 直径5.5cmのカレンダーの紙筒に直径0.5mmのエナメル線を80回巻いたもの。
10回巻くごとにタップを出して，アンテナとダイオードの接続位置を変えられる
ようにしておいた。（インピーダンスマッチングを最良にするため)
----コイルのインダクタンスLを求める計算-------------------------------------
AM放送の周波数範囲 545〜1605kHz
バリコンが最大容量 C=430pF のとき，同調周波数 f=540kHz とすると，
同調周波数 f=1/(2*3.14*sqr(L*C)) より コイルのインダクタンス L=200microH
コイルの半径をa，コイルの長さをd，コイルの巻き数をN とすると，
L=K*(4*3.14/10^7)*3.14*a*a*N/d （Kは長岡定数で2a/dの値により変化)
今回は2a=5.5cm，d=4.0cmであるから，2a/d=1.4 で，このとき K=約0.6
a，d，Ｎ(=80)を代入してLを計算すると，L=約200microH
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トランス ・・・ 手持ちのジャンク品で全く不明
いろいろ試行錯誤してみて手持ちのものから最良のものを選んだ。
参考文献(1)によると，「トランジスタ用変圧器で20：1入力用」
または「3：1低周波変圧器でもよい」とある。
電源トランスを試したが，そこそこうまくいった。
トランジスタ ・・・ たまたまあったジャンク品で，SONY 2SB383(詳細不明，外形から電力増幅用か？)
スピーカー ・・・ 昔の真空管時代のもので出力トランス付き。直径約15cm。
回路は同じでも音量はスピーカーによって大きく変化します。
コンデンサー ・・・ 定数は適当。このくらいの容量であればいいようです。
写真では形の大きなものになっていますが，バリコンの形が大きいので
それとバランスをとっただけで特に意味はありません。
また，写真では試行錯誤に使った余分なコンデンサーも写っています。
アンテナ ・・・ ２階建て木造家屋の屋根裏に約8m
アース ・・・ きちんと地面にとる。
ロケーション
新潟市内。一番近い放送局のアンテナから約7kmくらい。
スピーカーで聞こえるのはこの一局のみです。
聞こえ具合
音量は小さいですが，６畳の静かな部屋で数ｍ離れても聞こえます。
音質はよくありません。割れたような音ですが，人の声は聞き取れ，意味もわかります。
音質が悪いのは１石Ｂ級増幅になっているためです。
素子の定数を変えたり，回路を変えたりしたのですが，結局単純なこの回路がいいようです。
最後に
どこでも可能というものではありませんが，同じような環境の人は挑戦してみてはどうでしょうか。
実用的には今一歩ですが、シンプルな構造と電気料金無しでいつでも聴けるという精神的満足感に浸ることができます。Ａ級増幅に近づくように回路を変更し，音質を改善することが今後の課題です。どなたか挑戦したら教えて下さい。
参考文献
(1)
トランジスタ 実験と工作 マニュアル，北川一雄 著，オーム社，昭和４６年
「無電池増幅形鉱石ラジオの研究」ということで３例の回路図が載っています。