コイル交換で短波帯まで受信可能なストレート式AMラジオ
高周波増幅回路と低周波増幅回路にICを利用し,調整個所も無く手軽に作製できます。
単3電池2本使用で,少ない消費電力でも十分な音量でスピーカーを鳴らします。
同調回路のコイルをプラグイン方式で交換できるようにしてありますので,コイルを自作して短波放送を受信することもできます。
工作の楽しみ,AM中波局を聴く楽しみ,同調コイルを付け替えて短波局を探る楽しみ,いろんな楽しみを味わえるラジオです。
ブロック図
アンテナ → 同調回路 → 高周波増幅・検波回路 → 低周波増幅回路 → スピーカー
(ミツミ電機IC LMF501) (東芝IC TA7368P)
使用IC
LMF501(ミツミ電機)
回路構成 4段高周波増幅回路+検波回路
電源電圧 1.3V以上(標準1.4V) / 実用周波数 150k〜3MHz
入力抵抗 4MΩ / 電力利得 70dB
TA7368P(東芝)
低周波増幅用IC / 電源電圧 2〜10V
出力電力 電源Vcc=3V,負荷RL=4Ωで120mW
電圧利得 40dB(Vin=0.5mVrms) / 入力抵抗 27kΩ
どちらもこの分野ではポピュラーで安価なICです。
LMF501は
実用周波数が150k〜3MHzとなっていますが,電力利得が大きいので試してみると3MHz以上の短波帯でも使えるようです。ICのデータ資料はYahoo等で検索すると見つかります。インターネット時代になって便利になったことのひとつです。
回路図
同調コイルをプラクイン式で交換できるようにしています。
同調コイル用ジャックに何も刺さない場合は,基盤裏に取付けてあるAM中波用バーアンテナが働くようになっています。
2つのICまわりの回路は,ほぼメーカーのICデータ資料にある通りのものです。(特にコンデンサーは手もちで近い値のものを使用)
TA7368Pの出力をスピーカー直前のスイッチにより2mHのコイルを通せるようになっていますが,高域カット用です。NHK「ラジオ深夜便」を聴くのにぴったりの音質です。(まったくの個人的趣味) コイルの2mHという値はそれが私のジャンク箱にあったから使用したというだけです。
LMF501に供給する電源電圧
LMF501に電源を供給する部分の発光ダイオードは単なるパイロットランプではありません。TA7368Pは3Vで動作させていますが,LMF501の動作電圧は1.5V前後にしないといけないため,発光ダイオードの順方向電圧降下(1.8V程度)を利用しています。
発光ダイオードの性質
電流I=10mA程度で十分な輝度が得られる。
順方向電圧降下は電流に関係なくほぼ1.8〜2V程度。
手元にあった発光ダイオードは数mAでうっすら点灯し,そのとき順方向電圧降下は1.8V程度でした。
電流はできるだけ少ない方が電池の消耗が少ないので,3mAとすると,
直列に接続された抵抗R[Ω]と発光ダイオードにかかる電圧の和が3Vなので,
R=(3.0−1.8)/0.003=400[Ω]
実際に用いた抵抗は100+330[Ω]です。標準より少ない電流のはずですが十分な光量でした。
この結果,手元で普通に聞き取れる程度の音量にした場合電池から流れる電流は10〜20mA程度になっています。
同調コイル
同調コイルのインダクタンスをL[H],コンデンサの容量をC[F],同調周波数をf
[Hz]
とすると
よって
この式から最大容量C=260pFのポリバリコンで
f=1.6MHzに同調させるためにはL=38μH
f=3.2MHzに同調させるためにはL=9.5μH
f=6MHzに同調させるためにはL=2.7μH
マイクロインダクタで近い値の39μH,10μH,3.3ΜHを用意しました。
コイルを自作するなら,インダクタンスL[H]は次式で近似できます。
ただし,rはコイルの半径[cm],lはコイルの長さ[cm],Nは巻き数,Kは長岡係数です。
長岡係数Kの近似式は以下の通りです。
直径3.1cmのフィルムケースに直径0.6mmのエナメル線を12回巻いたとすると,
これらの式を用いてL=7.6μHとなります。
これでポリバリコンの容量が20pFから260pFだとすると,計算上は3.6MHzから12MHzの短波帯をカバーするはずなのですが,実際は3.6MHzから8MHz程度しか受信できませんでした。アンテナコイルは5回巻きです。
主なパーツと価格
LMF501 120円
TA7368P 100円
単連ポリバリコン 180円
ポリバリコン用延長シャフト 80円
つまみ 110円
10kΩボリューム 120円
汎用基板 200〜300円
バーアンテナ 350円
P型カーボン抵抗 1個10円
セラミックコンデンサ 1個10〜20円
電解コンデンサ 1個30円
マイクロインダクタ 1個70〜100円
電池ケース 120円
基板用超小型トグルスイッチ 130円
プラグ・ジャック 各100円
小型スピーカ 200円
ほとんど,サトー電気の通販で入手可能です。価格はおよそのものです。
私の場合は半数は手持ちのジャンクパーツです。抵抗やコンデンサは秋月電子の500円のパーツ袋でほとんど間に合ってます。(今もやってるかどうかはわかりません)
工作の実際
まず,ブレッドボード上に仮組みしてみて動作を確認します。
完成したラジオです。フィルムケースを利用したコイルで短波を受信中のものです。青い導線がアンテナ,白い導線がアースです。スピーカーは基板の切れ端に穴をあけて接着剤でつけてあります。それにプラグを直接ハンダ付けし,イヤホンジャックに接続してます。きちんとしたスピーカーに接続すれば音質が向上します。この状態で聴いているので高域カットのコイルを入れました。
コイルにマイクロインダクタを利用中のものです。白いわに口クリップがアンテナ線です。同調コイル用ジャックに何も刺さない場合は,基盤裏に取付けてあるAM中波用バーアンテナが働くようになっています。
机に付けたアンテナとアースの端子です。アンテナは屋根裏に約8mの導線を這わしてあるあるだけです。
ポリバリコンに延長シャフトを接続してつまみを取り付けます。
ケース代わりの木製の台です。のこぎりで切り込みを入れて基板を差し込んでます。
木製台にコイルを収納した状態です。
工作の楽しみ・受信の楽しみ
・失敗の楽しみ
新潟市内ですが,ローカルのAM中波局はバーアンテナでバンバン入ります。日本海をはさんだ隣国の放送も聞こえてきます。
短波帯は屋根裏に張った約8mのアンテナ線に接続して聴きます。朝鮮語,中国語,ロシア語,英語,・・・いろんな言語が聞こえてきます。夜はもっぱら高域をカットしてNHK「ラジオ深夜便」を眠りにつくまで楽しんでます。消費電力も少なく一回電池を入れると毎日数時間聴いても前の電池交換はいつだったか忘れるほどです。工作の楽しみ,AM中波局を聴く楽しみ,同調コイルを付け替えて短波局を探る楽しみ,いろんな楽しみを味わえるラジオです。IC使用の原理も簡単なストレートラジオで調整個所もありませんが,基板上のパーツの配置やコイルを巻くなどのそれなりの工夫も必要です。はんだ付けを含む電子工作の多少の経験があれば,まず完成すると思います。うまくいかなくともその解決がまた貴重な経験となり,楽しみにもなります。昔のラジオ少年に戻って工作してみませんか。