昔からラジオを聴くのが好きでした。今,家では食事のときも,何か作業をするときもラジオの音が聞こえています。

 いつまでだったか記憶ははっきりしないのですが,小学校低学年の頃,家にあったのは真空管式のラジオでした。家族で食事をする丸いちゃぶ台のわきの茶箪笥の一番上に大切に置かれていました。夕方に子供向けの連続ラジオドラマがあって,外で遊んでいて薄暗くなると「***が始まるよ」と呼ばれて家に入り,ドラマを聴いた後夕食だった記憶があります。そのラジオドラマが何であったのかはまったく覚えていません。内容も理解できなかったような気がします。毎日夕方呼ばれてその日の外での遊びはそれでお終いでした。夕食になるので,遊びを止めさせて子供を家に入れる口実に使われていたのかもしれません。昭和30年代前半の頃です。

 少し大きくなると,ラジオのメカニズムにあこがれました。中学の技術家庭の授業で組み立てたのは真空管式のラジオでしたが,そのころ初めて自分で買ったのは発売されたばかりの電子ブロックでした。早速ラジオを組んでみたのですが,家が山に囲まれた田舎だったこともあり,聞こえたのはクリスタルイヤホンからのかすかな音だけでした。

 高校生になって買ってもらったのがSONYのICF−500Sでした。その少し前にアマチュア無線の免許に合格していました。アマチュア無線の交信にはまったく興味が無かったのですがラジオや無線機の仕組には技術的な興味がありました。何とか短波の入るまともなラジオが欲しいという気持ちでした。技術家庭での教材用の真空管ラジオキットや電子ブロックのラジオからいきなりこのラジオだったのでとても感動しました。すごい性能(と思った)でした。BCLがブームになる以前の話です。このラジオはその後もずっとメインで使い続けていて,メーターは振れなくなってしまいましたが,今でも健在です。35年もたっていますが性能もデザインも今でも見劣りしないと思っています。

 大学は,工学面の人工的技術よりも自然界のメカニズムに興味を引かれ,物理に進みましたが,ラジオのメカニズムとその通信手段に対する素朴なあこがれは子供のときのままのような気がします。耳を澄まして空中に漂う電波の淡いエネルギーを拾うという感じが好きなのです。

 このページでは,気に入ったラジオの幾つかをその発売された年の出来事にもふれつつ紹介します。ラジオは特に何かテーマを持って数を集めたわけではありません。これまで長く使っていたいくつかのラジオと,最近インターネットオークションで入手したいくつかです。それぞれ個人的に愛着や思い出のあるものばかりです。少し手を入れてちゃんと聞こえる状態にあることはもちろんですが,私にとって脇に置いてスイッチを入れたくなる魅力ある実用ラジオであることが基本条件です。製造時に直接所有していなくても,自分の成長の過程で何らかの形で思い出のある機種なので,私の年齢以上に古いものはありませんし,最新のデジタル機もありません。

 その年の出来事については,そのラジオが誕生し活躍した年がどの様な時代であったのか,自分のためにまとめたものです。それは自分の生きてきた時代をたどる旅でもあります。興味のままに項目を挙げていますので決して客観的なものではないかもしれませんが,このページを見てくださる方と,その時代を共有できれば幸いです。

 小学校1年生の時の写真です。黒板の上には1から100までの数字と「あいうえお」の五十音表が貼られていました。同じカードを各人持っていて,毎朝机の上に並べて先生が教室に来られるのを待っていました。右はその頃のラジオTR-716(SONY)です。

 

 小学校6年生の時の写真です。みんなとてもいい表情をしています。後ろには「努力」の文字が掲げられていました。素直にその言葉を受け止めることのできる時代でした。SONYの『ソリッドステート11』シリーズはこの頃のラジオです。

 

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