DSPラジオの製作

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 DSPラジオの話題をネットや雑誌で目にしました。DSPとはDigital Signal Processing の略です。従来のアナログ部品を使わず,アナログ信号をAD変換後デジタル処理でフィルタや復調などを行ってしまうことのようです。ラジオ用に専用のICが出来ていて,バリコンやIFTも用いず,中波・短波・FMの全てのラジオ放送電波を受信できるデジタルラジオが,基本的にはひとつのICで出来てしまいます。早速工作したくなりました。ネットで検索すると,パーツショップ aitendo のDSPラジオモジュールM6952(680円)がヒットしました。AKCテクノロジー社のDSPラジオチップIC AKC6952 と,最低限必要な抵抗やコンデンサー,水晶発振子等が小さな基板に半田付けされたものです。外付けとして,AMアンテナとしてのインダクタ,FMアンテナとしてのリード線,選局・音量調節用の50kΩの可変抵抗2個,イヤホンジャックとイヤホン,3.0〜4.5V電源等を接続すれば小さなデジタルラジオが完成してしまいます。AKC6952について検索するとAKCテクノロジー社のデータシートもヒットするのですが,中国語でよくわかりません。aitendo のWebPageで公開されている情報の通りに作製してみました。aitendoのパーツやキットには,基本的に紙の資料や説明書は付属しません。WebPageで提供される資料がすべてです。

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 ブレッドボードに組んで動作を確認してみました。黒いブレッドボード上の青い基板が M6952 です。新潟市内ですが,普通のラジオで受信できるAM3局とFM4局すべてOKです。このままでスピーカーを鳴らすのは厳しいようですが,イヤホンでは十分な音量です。音質もよく,選局も気持ちよくスパッと出来ます。小さなAMバーアンテナとFM用の短い導線アンテナで,AM・FMとも感度も十分です。アクリル板でコンパクトなケースを作ろうかとも考えたのですが,ブレッドボードで遊んでいるうちに単3電池ケースに電池ごと組み込んでポケットラジオになるのではないかと思いました。「よみがえれ! ジャンクラジオ」の基本精神である「常に脇に置いてスイッチを入れたくなるラジオ」になったのではないかと思います。今後,ウォーキングのお供になりそうです。

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 手持ちのジャンクパーツから単3電池ケースを拾い出してみました。単3電池を3個ずつ裏表に6個入れるケースを使うことにしました。

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 片面にAMの小さなバーアンテナとM6952をのせた小さい基板,側面に選局と音量の2つのダイヤルと電源を兼ねたAM・FM切り替えトグルスイッチ,裏面に単3電池2本と側面にイヤホン端子を配置してます。50kΩの可変抵抗は選局用はAカーブ,音量調整用はBカーブを用います。FM音声出力はステレオ出力ですが,LとRは同位相のようです。LとRを基板上でショートさせて,イヤホン端子はモノラル出力としました。aitendoのWeb資料にはこの点説明がありません。オシロスコープで確認したわけではないのですが,これでうまく動作しています。aitendoのDSPラジオ基板すべてがこうとは限らないので注意が必要です。別のAKC6959を用いた基板では,オーディオ逆位相出力の記載があります。この場合モノラル出力とするにはアース端子を使わないで,LとRをイヤホンやスピーカーに接続します。

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 心配なので,電源の配線が済んだ状態で,残された部分をすべて仮配線して動作を確認することにしました。パーツと配線が狭い空間に詰め込まれるので半田付けが済んだ後での手直しは面倒です。大丈夫なことを確認して組込みを行いました。

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 最後に側面をアクリル板で覆いました。アクリル板を熱して曲げるための専用の道具は持っていません。卓上料理に使う電気ホットプレートをいつも利用してます。便利です。直線状に折り曲げたいときはホットプレートのヘリを,広い範囲を熱したいときはプレート中央を使います。今回は現物合わせで曲げていきます。アクリル板をグルっと巻いて最後につなぎ目を透明テープで止めておしまいです。少し固いくらいに電池ケースがはめ込まれるようにアクリル板を曲げたので,よほど乱暴なことをしなければ抜け落ちません。

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 完成後,電池から流れ出る電流はイヤホンの音量中程度で30mA弱でした。形は小さくとも電流は昔のトランジスタラジオ並みに流れています。AM・FMインジケーター用LEDとチューニングインジケーター用LEDで20mA(10mA×2個)位使っているのでしょうか。写真のモノラルイヤホンは100円ショプで購入しましたが,結構いけます。900円程度の国内某V社製より省電力で音質も良い気がします。耳へのフィット感やデザインも良いと思います。左のダイヤルが音量調節,右が選局ダイヤルです。選局はダイヤルをゆっくり回していくとアナログのスーパーヘテロダインと比べ非常に狭い範囲でスパッと入るという感じです。気持ちよい選局で,非常に安定してます。

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 M6952ポケットラジオが調子良かったので,スピーカーを鳴らす小型ラジオも作製したくなりました。M6952にアンプを追加しても良いのですが,aitendoの基板キットには安価で魅力あるDSPラジオが複数並んでいます。デジタル選局・デジタル周波数表示のラジオも小さな基板1枚で安価に出来てしまいます。「よみがえれ! ジャンクラジオ」精神で中身はデジタルでも操作はアナログ的なものが好きなので,M6952に小型スピーカーを駆動できる程度のアンプを組み込んでいると思われるAKCテクノロジー社のDSPラジオチップIC AKC6959 を使用した基板キット AKIT-6959(1950円) を組み立ててみました。こちらは基板キットなので,プリント基板に各パーツをハンダ付けする必要があります。チップICであるAKC6959のハンダ付けが最大の難関でした。「チップIC ハンダ付け」で検索すると極細のコテを使わなくてもアマチュアのできる方法がいろいろ出てきますので参考にしました。使用したスピーカーは10年近く前に学研「大人の科学マガジン別冊」の付録についたFOSTEX製7cmフルレンジスピーカーの組み立てキットを自作バスレフ箱にセットしたものです。小音量でもダクトが上手く働いて,この程度の口径でも低音も結構うまく出ています。音質が非常に良く,好みもあるでしょうがM6952同様気持ち良い周波数選択が出来ます。これも「常に脇に置いてスイッチを入れたくなるラジオ」になりました。

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 次の写真はこれまでウォーキングのお供であったポケットラジオです。トリオ(ケンウッド)製です。発売は30年近く前と思われる懐かしい機種ですが,使用材質やデザインは今でも通用するものです。小さな太陽電池に直射日光が当たっていればイヤホンでの音量も十分です。小さなボタン型の内蔵充電池で動作します。日光に当てて充電します。充電池はとっくに使えなくなり,10年以上前にウォークマン時代のガム型充電池で動作するようにしました。そのガム型充電池も市場から消えました。液漏れの形跡もありますが,まだ動作可能です。中身はきちんとトランジスタでスーパーヘテロダインを組んでます。付属の小さな太陽電池だけでも動作するのだから,ものすごい省エネです。ガム型充電池だと別電源で一度充電すると,充電した日を忘れるくらいに長く使用できました。20年以上前に全国展開のT書店が近所に開店した時,投げ売りに近い形で100円か200円で入手した物です。複数入手しておけばよかったと後悔してます。何年に発売されて,本当の価格は当時いくらだったのか,ご存知の方がおられれば教えて下さい。

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