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ノートパソコンをオシロスコープもどきにする


 安価に,少ない努力でノートパソコン(PC/AT互換機)をオシロスコープもどきにする方法を紹介する。音声の波形表示だけならば,Windowsパソコンのマイク端子を通して可能であるが,オシロスコープのように直流から交流まで電圧値を広い範囲にわたって取り込み,表示することは不可能である。ここではシリアルポートまたはパラレルポートにA/Dコンバータを接続して,-20〜+20Vの直流から音声程度の周波数の信号波形をほぼリアルタイムに表示する方法を紹介する。シリアルやパラレルの標準ポートを使用するので,ディスクトップパソコンでももちろん可能である。接続するA/Dコンバータ部分は安価なキットまたは製品を使用し,ソフトウェアもそれに付属のものを用いた。使用したA/Dコンバータの入力電圧が0〜5Vなのでシフト電圧を加える回路,より広い電圧に対応するため増幅部や電圧レンジ切り替えのための回路,測定回路への影響を少なくするための高入力インピーダンス回路等を自作した。精度はやや怪しげであるが最大-20〜+20Vの入力で1kHz程度までならば,V.POSITION,VOLTS/DIV,VARIABLEもついて,1現象であるがほぼオシロスコープ気分を味わうことができる。PICマイコンのアセンブラプログラミングができれば2現象に挑戦することも可能である。

 使用したキットや製品は次のものである。

・シリアルポート接続用
 PIC-ADC超小型計測アダプタキット(秋月電子通商,3200円)
  PICマイコン16C715(20MHz)使用のA/Dコンバータユニット
  8ビット4CH,RS232C接続で通信

・パラレルポート接続用
 Pico Technology社(英国)パソコン用計測アダプタPICO ADC-10
  秋月電子通商,9800円
  8ビット1CH,20kHサンプリング
  詳細は http://www.picotech.co.uk/

  秋月電子は http://www1.tomakomai.or.jp/akizuki/

 写真は右がPIC-ADC計測アダプタ,左の黄色いのがPICO ADC-10

 自作した回路は次の通りで,費用はケースを入れても2000円程度である。

上図の回路を次の写真のように組んだ。
 つまみ類は左から電源スイッチを兼ねた電圧レンジ切り替えのロータリースイッチ,垂直位置調整(VR1),垂直感度微調整(VR2),垂直感度微調整ON・OFFスイッチ(SW)。

 回路は基本的にインスツルメンテーション・アンプを片電源で作動するようにしたものである。0〜5Vのシフト電圧を可変で加えられるようにしてある。オシロスコープのVOLTS/DIVに相当する入力レンジの切り替えはここでは単純に電圧計と同じように抵抗による倍率器方式なので,レンジを切り替えると内部抵抗が変化してしまう。アンプの入力抵抗をRi,電気容量をCiとすると,倍率器の各抵抗Rとそれに並列に接続したコンデンサーの容量Cは,
                R・C=Ri・Ci
のとき,測定波形が歪まずに観察できるはずである。しかし,実際の製作にあたっては手持ちのコンデンサーの中から1kHz程度の波形を観察しながら最も歪まずそれらしく観察できるものを選んで使用したので,これが最良かどうかはわからない。またその他の抵抗やコンデンサーもたまたまあったものを使用したのでベストではないが,それらしく表示されている。アンプのゲインを決定する部分や倍率器の抵抗は本当は誤差のすくないものを使用すべきである。
 SWはオシロスコープでいえばVARIABLEをCALの位置にするかしないかのスイッチであるが,回路図からわかるようにVR2を無限大にはできないので本物のようにSWのOFFとONで連続したゲイン調整は出来ないでかなり跳んだ所からゲイン調整が始まる。VR2にスイッチ付きのものでより大きな抵抗値のものをを使えばよりスマートにできるが,ここでもたまたま持っていたパーツを使用した。

測定例を示す。

 つぎの画面はマイクから拾った「アー」の音を SW ON で増幅したものである。
 PICO ADC-10 とPico Technology社のWindows95/98/NT版ソフトを使用した。
 このソフトは表示速度もまずまずで,時間軸の目盛りもあり大変使いやすい。

 次の画面はマイクから拾った「オー」の音を SW ON で増幅したものである。
 PIC-ADC超小型計測アダプタキットと付属のPC/AT互換機用ソフトを使用した。
 表示速度はPico版より高速であるが,時間軸目盛りが入っていないのが欠点である。

 

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